1 はじめに 

 人を騙して、なにかもらったら詐欺です。

 好きでもない女性に好きだとか言って騙すとどうなりますか?勘定は自分持ちで一度デートしただけだったら、詐欺にはなりません。

 詐欺罪は刑法246条に定められています。

"第246条 (詐欺)

1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。"

 「財物を交付させた」とか書いてあります。お金は「財物」です。

もちろんですね。株券も財物です。マツモトキヨシで売ってるファンデーションは財物です。

イトーヨーカドーで売っている大根も財物です。骨董品は財物です。

「なんでも鑑定団」で自己評価額300万円としたら、3000円だった壺も財物です。残念でした。

コンビニで20円で売っているチロルチョコだって財物です。

 嘘を言って、人を騙し、ここに挙げたような物をだまし取れば、詐欺罪が成立します。

最初に触れた一度だけのデートの例だと、被害者から財物を受け取っていないので、詐欺罪は成立しません。

 「不法の利益を得」る場合も詐欺だから、デートしてもらえば詐欺だとお考えの方、いらっしゃいますか。

そりゃあ、綾瀬はるかとデートできたら、利益を得たような気持ちになりますかね。

いや綾瀬はるかでなくても、可愛い女性とデートできたら、天にも昇る心持ち!「利益」なんて気持ちになるかもしれません。

 でも、条文をよく読むと「不法の利益」は「財産上」のものであることが要求されています。

デートすることは、気持ちの上で利益になっても、「財産上」の利益とは言えないでしょう。デートで詐欺罪は成立しません。

 

2 結婚詐欺

 もちろん、結婚詐欺は別です。結婚詐欺師は、そんな気もないのに女性に結婚すると言って騙し、財産を巻き上げます。

財産を巻き上げれば、「財物を交付させた」ことになりますから、詐欺罪が成立します。

 ただ、結婚詐欺は裁判で立証することがむずかしそうです。人を欺くことが必要なので、

人を騙そうというつもりだったことを立証しなければなりません。

その結婚詐欺師が、一人の女性を騙してお金を巻き上げた場合、

「彼女が好きだったんです。でも確かにお金までもらったのは甘えすぎました。でも、ボクの愛は真実です。」とか言われると、警察官も困っちゃうんじゃないでしょうか。

「ボクの愛は真実です。」とか言ったことのある方はいらっしゃいますか。

女性にもてない私には一生、縁のない言葉でしょうね。もっとも、縁があっても、こんなこっぱずかしい台詞は言えませんが。

 立証はむずかしそうですが、たとえば事業資金が必要だとか、親の借金を返さないと実家をとられてしまうとかの嘘も言って、

お金を巻き上げた場合であれば、事業の準備をなにもしていないとか、親の借金なんかないとかの事実を証明すれば、有罪とできそうです。

でも、その場合、主な嘘の内容は事業を始めようとしているとか、親に借金があるというものです。

結婚するとかしないとかは、そんなに重要ではないことになりそうです。

 

3 詐欺に対する刑

 246条を見ると、「10年以下の懲役」とか書いてあります。

 10年!産まれたばかりの子が小学5年生になるまでの時間!いやぁ、刑務所に行ってて、いなかった間に大きくなったなぁ・・・

 じゃあ、20円のチロルチョコを一つだまし取ったら、10年刑務所に行くことになるのでしょうか。そんな馬鹿なことはありませんよね。

 手持ちの資料で一番重い刑を言い渡されたのは、7年というものです。

 警察官になりすまし、被害者の親族が交通事故を起こしたと嘘を言って、示談金との名目で9件にわたり、合計2600万円以上をだまし取ったという事件です。

 2600万円以上というと大金ですが、これでも10年はいきません。1500万円をだまし取って3年という事件もあります。

 1500万稼ぐのもたいへんですが、貯めるのもたいへんです。それをだまし取られて3年というのは重いのでしょうか、軽いのでしょうか。

 交番で、警察官に嘘を言って、500円をだまし取り、次の機会には540万円をだまし取ろうとして見破られ、検挙された例、警官に詐欺をはたらくとはいい度胸です。

 この事件では8ヶ月の刑が言い渡されました。

 詐欺の犯人に言い渡す刑を決める場合、やはり被害の金額が一番大きく影響します。

 

4 詐欺の被害者

 詐欺は単に財産を失わせるだけでなく、被害者に心の傷を負わせます。

 結婚詐欺で結婚を夢見た女性はどんなにか傷つくことでしょう。

 投資すれば3ヶ月の間に2倍にして返すからとか言って騙した場合、被害者はそんな話に乗ってしまった自分を責めます。

 同じ金額でも、単に盗まれた場合に比べ、被害者が自分を責める分だけ、被害者の傷は深いと言えるでしょう。

 えっちなサイトにアクセスしたら、突然電話がかかってきて、

「そのサイトにアクセスしたら1000万円支払わなければならないが、自分達に任せれば、アクセスの履歴を抹消してやる。」と言われ、

それを信じて何百万か払ってしまった人がいます。騙されたことに気付いた被害者は、自分がそんな嘘をうかうかと信じてしまったことで、自分を責めます。

 詐欺の被害者は、窃盗なんかの被害者に比べれば、はるかに気の毒です。

 

4 示談

 詐欺で逮捕されたとして、軽い処分を目指すには、なによりも示談を成立させることです。

もちろん、示談金を用意できる場合に限られますが。

 ところが、すでに書いたように、詐欺の被害者は自分を責めたりして、ひどく傷ついている場合があります。

こんなときに、示談を成立させるのはたいへんです。

 弁護士に任せるしかないでしょう。