はじめに

 万引きは犯罪です。出来心でしても犯罪です。犯罪には刑罰が科せられます。

1 万引き

  万引きとはなにかって、言うまでもありませんよね。

  CDだの、アクセサリーだの、食料品だのを商品棚から持ち出して、会計をせずに店を出れば万引きです。

  お金を払うつもりだったのにうっかり忘れてしまい、店を出た場合、犯罪にはなりませんが、だからと言って、警察沙汰になった場合に、そんな弁解が簡単に通るとは思わないでください。

 

2 万引きは窃盗罪

  万引きは窃盗罪の規定で処罰されます。窃盗罪の規定は刑法235条です。

 "刑法第235条 (窃盗)

   他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。"

  これを見てわかる通り、万引き(窃盗罪)は最大で10年以下の懲役、最小で50万円以下の罰金という刑罰が科されます。

 

3 初めての万引き

  さあ、あなたは万引きをしてしまいました。カバンの中には、前から欲しかったアクセサリー。お金を払っていません。

  ドキドキしながら店を出ようとします。すると、後ろからあなたを呼び止める女性の声がします。振り返ると、そこら中で見かけることができそうなおばちゃん。お母さんと同じぐらいの年配かなとというところ。

  そのおばちゃんが優しそうな声でいいます。「お客様、お勘定をお忘れではありませんか。」声は優しいんだけど、目が笑っていません。

  あなたはとっさに「あ、ごめんなさい。うっかりしてしまいました。」と言って、レジにむかいます。

  歩きながら、カバンから万引きしたアクセサリーを引っ張り出します。

  レジのお姉さんに、「うっかりしちゃった。私、そそっかしいから。」とか言いながら、お金を払います。

  でも、店を出るまで、ドキドキは止まりません。視線の端にそのおばちゃんが、ずっと笑わない目でこちらを見ているのが見えています。

  あなたは思いっきり後悔します。そのお店にはもう行かないと誓います。万引きももう二度としないと誓います。

 

  こんなときにどうなると思いますか?

   もちろん、警察沙汰にはなりません。そのおばちゃんは警備員で、あなたが万引きをしたことを知っています。

  でも、とりあえずお金を払って出て行ったんで、それ以上、警察沙汰にはしないことがほとんどでしょう。

  お金を払ったんでお店が儲かったからではありません。めんどくさいからです。

  警察沙汰にすると、警察官を呼んで事情を話さなければなりません。警察の現場検証にも付き合わなければなりません。

  警察官への説明に、人がとられます。お客様がいるときに現場検証なんかしてもらっては商売にならないので、

  閉店時間以降にお願いすることになります。店員は残業しなきゃいけません。店は残業代を払わなきゃいけません。

  店内で商品をカバンに入れて外から見えないようにして、代金を払わないで店を出れば、十中八九、万引きです。

  そのおばちゃんの警備員さんもあなたを万引きの犯人だとしか思っていません。

  でも、警察沙汰にすると店としても面倒なので、お金を払ってくれれば帰すのです。

  まあ、帰したとしても、警備員さんは「あの娘はもう二度とこの店に来ないでしょう。あの娘になにかを万引きされることはもうないでしょう。」とか思っているはずです。

    でも、逆に考えれば、こんなときにもおばちゃんが、「こいつはとっ捕まえなきゃ。」とか思ってしまえば、警察沙汰になることもありえます。

 

  こんなふうにおとがめなしで終わるのは、一度だけだと思っておいた方がいいでしょう。警備員さんはあなたの顔を忘れません。あなたがそのお店に入れば、その瞬間にあなたに気付きます。

  警備員さんはあなたを追跡します。追跡されたらすぐにわかるはずだとか思わないこと。

  警備員さんは相手に気付かれずに、追跡するコツを身につけています。万引きをしそうな客を見分けるコツも身につけています。

  あなたが商品をカバンに入れて、お店を出ようとした瞬間、また優しそうな声が聞こえるでしょう。

  あなたが振り返れば、もちろん、そこにはおばちゃんの笑わない目が待っています。今度はおばちゃんは110番するはずです。

 

  その店で万引きするのが初めてだったら警察沙汰にはならないとも考えない方がいいです。

  万引きに手を焼いているチェーン店なんかでは、万引きを発見した場合には、必ず110番するという方針をすべてのお店に徹底していることがあります。

 

4 開き直りはいかがなものか。

  さあ、あなたは万引きをしてしまいました。カバンの中には、前から欲しかったアクセサリー。お金を払っていません。以下同文で、おばちゃんかに声をかけられました。もちろん、目が笑っていません。

  あなたはばっくれます。「え~~~!なんのことかわかんないし・・・」おばちゃんはお母さんと同じぐらいの年格好。いつもお母さんを内心でバカにしているし、お母さんは結局はなんでも許してくれます。このおばちゃんもお母さんと同じだろうとか考えてました。

  最低の対応です。おばちゃんは店の奥に来ることを促します。あなたは、「え~~~、私、忙しいし。」とか言って逃げようとしますが、おばちゃんは食い下がります。走って逃げたら追っかけてくることは覚悟しておいた方がいいでしょう。

  おばちゃんはあなたを逮捕できます。あなたは現行犯人です。刑事訴訟法213条は、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」と定めています。「何人でも」というのは、あらゆる人ということです。警察官でなくても、現行犯逮捕できると定めてあるわけです。優しい声だけど目が笑っていないおばちゃんは、あなたを逮捕できます。もちろん、逃げようとしたら、腕を握って逃がさないぐらいのことはできます。お母さんのように見えてバカにしていいように見えても、柔道の有段者だったりするかもしれません。

  あなたは店の裏側にある事務所に連れて行かれます。おばちゃんは、カバンの中から万引きしたアクセサリーを出させて、110番します。警官が来て、あなたは警察署に。

 

5 警察署に連れて行かれてから。

  じゃあ、警察署に連れて行かれたら必ず訴えられてしまうかというと、そうでもありません。警官からがんがん怒鳴られて説教され、お家に電話されて、始末書を書かされ、迎えに来たお母さんにつれて帰られるということもあります。

  いつもバカにしているお母さんがありがたく思えること。でも、お母さんの前で大人しくしてるのは2~3日でしょうけど。

 

6 処分は?

  普通、1回の万引きでは訴えられません。6000万円の指輪を万引きして、弁償できなければ別でしょうけど。

  回数が重なると、まず逮捕されます。警察の留置場行きです。その上で、起訴されてしまいます。

  一言言っておくと、ここでは成人の場合を考えています。少年だと少年法が適用され、警察の後に少年鑑別所に送られ、少年審判を受けることになります。「なんだか万引した犯人のキャラがJKみたいだったけど・・・」と感じられる方もいらっしゃるかとは思いますが、人間あまり細かいことにこだわってると、幸せになれません。すれすれ20歳になったばかりのJDってとこでどうでしょう。

  成人が万引きで最初起訴されるときには、簡単な手続きで罰金だけということになるでしょう。しかし、それに懲りずに繰り返していると、裁判です。よくて執行猶予、悪ければ刑務所行きです。

 

7 万引きの弁護活動

  起訴されないためになにをすべきか、仮に起訴された場合になんとか執行猶予となるにはどうすべきか。

  答えは一つです。早いところ弁護士に相談しましょう。逮捕されると、警察官が「弁護士いるか。」と聞いてくれるので、「お願いします。」と言いましょう。お母さんが会いに来てくれたら、「早く弁護士さんにお願いして。」と頼みましょう。

  と言いたいところですが、弁護士をつけなくても訴えられなかったり、執行猶予となることがありえないわけではありません。

  被害者のある犯罪で刑事処分を軽くするには、なによりもまず示談です。お母さんが走り回って、お店にお金を払って示談してくれれば、軽い処分となる可能性は跳ね上がるでしょう。

  ただ、それだけで十分とは言えない場合があります。たとえば、示談はしたものの、あなたが検察官の前で「示談したんだから、終わったことだし。私も出来心でしたんだから、たいして悪いことしたわけじゃないし。なんでこんなに閉じこめられるかわかんないし。あんたも上から目線でやな感じ。」とか言って、ふてぶてしく開き直っていたら、検察官はいろいろ考えてしまうでしょう。

  示談だけでは十分ではありません。あなたが深く反省し、二度と同じことをしないと決意していることを検察官にアピールしなければなりません。弁護士は、そのためには、なにを、いつまでにしなければならないかを知っています。

  そもそも、示談の方法にしても、弁護士は日頃からしているのですから、よく知っています。母親が子を思うあまり、弁護士のアドバイスを無視して、被害者に会いに行ってしまった例を知っています。被害者を怒らせてしまい、それまでの弁護士の努力が水の泡。子どもは実刑です。

  確かに弁護士を立てるとお金はかかるのですが、それだけの意味はあるはずです。示談ができなくて訴えられてしまえば、有罪判決がくだされます。経歴上のひどい汚点になります。前科があることで、結婚できなかったり、就職ができなくなっりしてしまいます。

  示談ができたのに、反省ぶりのアピールが不十分で訴えられたりしても同じです。

  執行猶予になれば、刑務所には行かなくてすみますが、これも前科のうちです。刑務所に送られることになれば、人生はメチャメチャです。

  刑事裁判は人生をかけた戦いです。弁護士と共に戦い、失われかけた人生を取り戻すべきです。