1 カツアゲ?

 なに~金もってへん?

 嘘言うなや。祭り来てるのにないわけあらへんがな・・・

 え、落とした。ほんまかいな。ほんまなんやな。

 せやったら、ちょっと跳んでみぃ。なにもじもじしてんねん。ニキビだらけの顔してもじもじしたかて、ちょっとも可愛いないがな。ええから、跳べちゅうとんねん。ほらほら、跳べや・・・

 なんや、ちゃりちゃり言うとるがな。金あるやないか。お前、金ないちゅうとったやんけ。嘘ついたんやな。わし傷ついたわ。慰謝料よこさんかい。よこさんのやったら、タコ殴りにしたったるぞ・・・

 

 経験者いますか?こんな目に遭ったことのある人?逆に、こんな目に遭わせたことがある人?

 

2 カツアゲはどんな処罰を受けるのでしょうか。

   カツアゲは、恐喝罪か強盗罪ということになります。どんなふうに決まっているのか見てみましょうか。

   恐喝罪は、こんなふうに定めてあります。

(恐喝)

第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

   強盗罪は、こんなふうに定めてあります。

(強盗)

第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

3 恐喝と強盗の差

 (1) どこが違うかというと、刑が違いますよね。恐喝は10年以下の懲役。強盗は5年以上の懲役!

   つまり、恐喝は1ヶ月から10年まで。強盗は5年から20年までということになります。懲役は原則として20年が上限だと定められています。

 (2) なんでこんな差が生ずるのでしょう。

   ものの本によると、強盗は「相手の反抗を抑圧する程度」の暴行・脅迫を手段として、相手の意思に反して物を奪うから重いと書いてあります。恐喝はそんなに激しくない手段で、被害者に交付させるから軽いというわけです。

   つまり、強盗は激しい暴行・恐喝でするもの、恐喝はそんなに激しくないやり方でやるもの、強盗は相手が嫌だというのに取り上げるもの、恐喝は相手が嫌々でも差し出したものを取り上げるというものだから、強盗の方が重いということです。

   なんとなくわかりますか?でも、「相手の反抗を抑圧する程度」の暴行か否かって、そんな簡単に判断できるのでしょうか。ものの本には、ビミョーで曖昧とか書いてあります。

   強盗罪が成立すれば、5年はくらい込みます。刑法の定めでは、懲役5年を宣告する場合には、執行猶予をつけられません。執行猶予は懲役3年以下でしかつかないと条文に書いてあります。仮にそれまで悪いことをして逮捕されたことなんてなくても、強盗罪だということになると、必ず刑務所に行って、しかも最低5年は出られません。まぁ、被害者と示談できたりすれば、また話は別ですが。でも、場合によっては、これは可哀想かもしれません。

   そんなときには、検察官は「うん、これは被害者の反抗を抑圧するほどのもんじゃないかもしれん。」なんて言って、恐喝罪で起訴するといったこともあるようです。被害者を縛って、骨折まで負わせたのに、恐喝でしか処罰されなかった事件があります。

   こんな場合に、仮に裁判官が「ありゃま、これは被害者の反抗を抑圧するぐらいの暴行だろう。」となんて思ったとしても、現在の法律では、検察官が「やっぱ、強盗で処罰してくださいな。」なんて手続きをとらない限り、強盗罪では処罰できません。裁判官にできるのは、「恐喝にするけど、ちょっとひどいな。よし。ちょっと刑を重くしてやろう。」なんて言って、少し長めの懲役を宣告することぐらいです。

 (3) 恐喝は、「相手が嫌々でも差し出したものを取り上げる」って書きました。条文にも財物を「交付させた」と書いてあります。

   だったら、相手の反抗を抑圧しない程度の脅迫をして、相手が渡そうともしないのに、物を取り上げてしまったら、どうなるでしょう。相手の反抗を抑圧しない程度の脅迫だから、強盗は成立しません。相手が渡そうともしないのに取り上げたのだから「交付させた」ことにならないから恐喝罪も成立しないのでしょうか。「オレ、差し出させたんじゃなくて、取り上げたんだから、無罪ね。」とか言って、大手を振って裁判所の門を出て行く犯人!

   こんな馬鹿馬鹿しいことはないでしょう。もちろん、裁判所もそんな判断はしません。最高裁の判例では、怖がって黙っているのでしめたと思い、勝手に持ってきた場合には恐喝罪が成立するとしたものがあります。黙示の処分行為があるとか理屈をこねますが、まぁ屁理屈の類いでしょう。でも、こんな場合に犯人を無罪とするなんてことは正しいのでしょうか。それが正しいことだと思う人は稀でしょう。屁理屈でも結果よければ、すべてよし。赤信号みんなで渡れば怖くないの類いって言ったら、最高裁の裁判官に怒られちゃいますね。

   いずれにせよ、恐喝罪と強盗罪の差はビミョーです。

4 強盗に・・・

  ビミョーであるだけに、カツアゲの度が過ぎて、強盗になってしまうこともあります。

  大きな池の周りで、夕方、ブラックバス釣りを楽しんでたおにいちゃんがいました。21歳ぐらいだったか、大人です。

  すると、顔見知りの男の子が2~3人そこにやってきました。みんな高校生ぐらいでしたが、同じ中学の先輩と後輩だったんで、おにいちゃんと馬鹿話して盛り上がっていました。

  そこへ、アベックがやって来ました。かなりいい感じだったようです。若い頃、アベック見るだけで腹立ててたことある人いますか?おにいちゃん、「生意気だ。」とか思ったようです。機嫌損ねて黙り込んでしまいました。男の子たちも「生意気だ。」と思ったのか、黙り込みます。横目でアベック見ては、視線を交わしているうち、おにいちゃん、「オレは先輩なんだから。」と思って、「おめぇら、なにやってんだ。生意気だろうが。」とか言って、アベックにちょっかいを出しました。なにが「オレは先輩なんだから。」なんでしょうね?

  アベックの男の方、「いや、ちょっと・・・」とか言って、彼女を連れて立ち去ろうとしました。ここで追っかけなければよかったのに、そのおにいちゃん、男の子達が見てるので、かっこつけなきゃと思っちゃいました。男の方に詰め寄って、殴りました。男の子たちが歓声を上げます。「さすが、先輩!」とか言ったやつもいました。おにいちゃん、もっといいところ見せようと思って、また殴りました。そうする内に、男の子達も手を出して、男の人をボコボコに。男の人は、とばっちりが彼女に向かうとたいへんなので、まったく抵抗しません。男の人は、顔が腫れ上がって、目が開かないように状態に。もちろん、血だらけです。不幸中の幸いで骨が折れたり、後遺症が残るほどではありませんでした。

  おにいちゃんは「けじめつけろよ。金払え。」と言って、また殴って何千円か盗ってしまいました。

  3名から4名で取り囲んで、ボコボコにすれば、強盗でしょう。しかも怪我をさせたのだから、強盗致傷という犯罪になり、刑は無期又は6年以上の懲役ということになります。無期懲役と言えば、一生、刑務所から出られません。刑法の定めでは、10年我慢すれば、仮釈放となる可能性も出てきますが、現実には20年とか30年とか務めなければ、仮釈放にはなりません。6年以上の懲役ならまだましですが、6年というと執行猶予がつきません。21歳のおにいちゃん、27歳になってやっと釈放。人生めちゃめちゃですね。

  もちろん、被害者の方がもっと可哀想です。6年ぐらい刑務所に行くのは当たり前だと考える方も多いかと思います。その気持ちは十分にわかります。

  ただ、この事件は成人といっても、子どもに毛が生えたぐらいのおにいちゃんが、後輩の前で粋がっているうちに、事が大きくなったものです。後輩達は少年なので、裁判ではなく、少年審判という手続きになります。刑務所に行くことになる可能性もあることはあります。でも、少年院止まりということもあるでしょう。鑑別所に行って、保護観察となって釈放される可能性もあります。後輩が釈放されて前科もつかないのに、先輩は刑務所に6年間!まぁ成人だったので、仕方ないのですが、少しおにいちゃんに酷な気持ちがしないでもありません。

  こんなときに、たとえば被害者と示談が成立すれば、検察官が「暴行したことは確かだが、相手の反抗を抑圧する程度じゃないんじゃないかな。」なんてと考えてくれて、恐喝で起訴するといったこともあるかもしれません。子どもに毛が生えた程度の成人だとか、示談が成立したとかいうことは、暴行の程度が「相手の反抗を抑圧する程度」であるかどうかということには関係しません。でも、何罪で起訴するかは検察官の裁量によります。このお兄ちゃん、どうなることでしょうか。

5 弁護方針

  こんな事件の弁護人になって、まずすることは、示談を目指すことです。被害者のある犯罪では、やはり示談ができるかどうかが処分に大きく影響します。強盗致傷で起訴されるか、恐喝罪と傷害罪で起訴されるかは大きなちがいです。

  ですから、捜査の段階では、示談を成立させて検察官に泣きつき、「まだ若いんだし、今度のことは心から反省していますから。」なんて言って、なんとか強盗罪で起訴されるのを防ごうとしなければなりません。

  強盗罪で起訴されてしまっても、示談が成立したことをアピールし、裁判官に「まだ若いんだし、今度のことは心から反省してますから。」とか訴えます。おんなじこと言ってますね。

  「酌量減軽」という制度があります。いろいろよい事情がある場合には、刑を軽くするという制度です。酌量減軽されることになれば、6年以上の刑を言い渡すはずのときでも、3年以上の刑を言い渡してもいいということになります。ぎりぎり、執行猶予に引っかかることになります。

  示談ができるかどうかで、このおにいちゃんの運命は大きく変わります。私が弁護すりのであれば、必死になって、示談を成立させようとするでしょう。